多摩大学大学院名誉教授、田坂 広志氏の講演をYoutube で拝聴しました。講演のテーマは『生死観』。この中で、田坂氏が3つの真実について述べています。
第一の真実〝人は、必ず死ぬ〟
第二の真実、〝人生は、一回しかない〟
第三の真実、〝人は、いつ死ぬか分からない〟
この三つの真実を見つめる覚悟が『死生観』とのことです。上記三つの真実は、誰でも当たり前のように知っていることですが、どれほどまで真剣にこの真実と向き合っているかは人それぞれ異なるかと思います。
先月、『フィリピンで死にたい』という70代の日本人女性のサポートをしました。既に余命半年の宣言を受けており、食事も口から取れない状態でした。今年に入ってからフィリピンでは、タール火山の噴火、コロナウイルスと、次々と災害が起こり、このタイミングでフィリピンに来るのは健常者であっても躊躇するところですが、その方は覚悟を決めてフィリピンにやってきました。
その女性は、昔からフィリピンに来て貧しい子供たちのために日本のお菓子を配ったり、教会のチャリティ活動に参加したりと、フィリピンのために貢献されてきました。そして、家族に内緒でフィリピンに小さな家を建てて、そこで最期を迎えると以前から決めていたようです。去年、病気が発覚して自らの命が長くないと悟り、以前から決めていたことを遂行するために、まさに命がけで海を渡ってフィリピンに来られました。
来比から2週間の人生最後の冒険でした。その冒険に介護士として参加させていただきました。過ぎてしまえばあっという間の2週間でしたが、私自身、本当に密度の濃い時間を過ごさせていただきました。最期は、彼女が望んだ通り、フィリピンに建てた小さな家で、友人たちに囲まれて、旅立たれました。
私は、涙の根源が分からない涙が出ましたが、それは悲しくて出た涙ではなく、人生を本当にやり切ったその方の姿に感動しての涙だと思います。
冒頭の三つの真実、〝人は必ず死ぬ〟〝人生は一回しかない〟そして、〝人はいつ死ぬかわからない〟
日本人の多くが自宅での死を望んでいるものの、8割の人は病院で死にます。どこで死ぬかを真剣に考え、命がけでフィリピンにやってきた女性のように、強い覚悟がなければ、死に場所を選べない世の中になりました。彼女の素晴らしい旅立ちを目の当たりにし、自らの『生死観』について真剣に考えるきっかけになりました。そして、これからの時代に求められる、介護士の役割についても、もっと真剣に考えていこうと思うようになりました。